TEL.044-953-2008
休診日:金曜・祝日
診療時間:9:00〜12:00
14:00〜19:00 (受付は18:30まで)
便のトラブルは、部屋を汚したり、見た目で明らかな異常が分かるので気になる方が多いと思います。下痢は見た目だけでも、形を保てる軟便、形を維持できない泥状の便、ほぼ液体の水様便などがあり、色では赤い血液が付いた鮮血便、黒いタール様の便など、かなり細かく分類することができます。また、見た目以外にも便の量、回数、しぶりがあるかどうかなどは下痢を考える際に必要な情報です。もちろん肉眼レベルだけではなく便を顕微鏡で観察することも必要です。下痢は消化不良、細菌、寄生虫など様々な原因によって引き起こされるので、これらの情報をもとに原因やペットの状況を把握しそれにあった治療をすることが重要です。例えば、下痢による脱水には輸液療法、腸内の細菌バランスが異常であれば抗生剤やプロバイオティクス、腸の粘膜保護や運動機能を改善するのに整腸剤を使用することがあります。
尿は血液から腎臓を介して濾過され、膀胱に溜まり排泄されます。これら尿に関わるものは泌尿器と呼ばれ、尿は泌尿器は勿論、もとが血液ということもあり、泌尿器以外の情報も反映することがあります。例えば、尿比重は尿を濃縮する能力が腎臓にあるか評価し、尿が酸性、中性、アルカリ性のどれか測ることで結石のリスクを評価します。また、本来尿に検出されないはずの尿蛋白、潜血、尿糖、ケトン体、亜硝酸などが検出されたときは測定された項目に沿った理由があるはずで、膀胱炎や糖尿病などの病気からきている可能性もあります。また、ビリルビンは犬では正常でも少しでることがありますが、肝障害や溶血性疾患では非常に多く検出されます。さらに尿を遠心しその沈渣を顕微鏡で見て、結晶や細菌や赤血球や白血球、円柱などを眼で観察します。物言わぬ動物の検査において、尿は大きな情報源なのです。
2018.11月 犬の急性膵炎
急性膵炎は、様々な原因によってもたらされる膵臓の自己消化と炎症反応であり、軽症なものから重症化するものまで状態は多岐にわたります。比較的に犬ではよく見られ、重篤な合併症を伴う全身疾患に発展し致死的なものとなることもあります。症状としては、食欲がなくなる、頻回の嘔吐(特に食後)、下痢、腹痛などが見られます。腹痛はわかりにくいかもしれませんが、腹部を触ると異常に嫌がる、力を入れる、腹部を丸めて震えながらじっとしていることなどが指標となります。また急性膵炎の危険因子として高脂肪な食事、無分別な食事、薬剤、犬種(ヨーキーやシュナウザーなど)、持病の有無(特に内分泌疾患)があります。もし急性膵炎が疑われたら、入院を基本とした積極的な治療が必要で、治療後も徹底した食事管理や投薬によって、厳しく管理しなければ病気を再燃させてしまうこともあるので注意が必要です。
2018.10月 犬の僧房弁閉鎖不全症
犬の心臓病は、心臓にある僧帽弁という弁がきれいに閉鎖することができなくなる僧帽弁閉鎖不全症が最も多いです。初期の状態では症状がないこともあり、健康診断などで心雑音を聴取され見つかることもあります。進行すると夜中の咳や運動不耐性、肺にうっ血がおき、全身の血液の巡りが悪くなると、肺水腫を伴う頻呼吸、開口呼吸、場合によってはチアノーゼを引き起こしている場合もあります。一般的には、5〜6才から徐々に進行しますので、定期的にレントゲンや心電図、超音波などで、心臓・全身状態を診て、その時々に合った薬で進行を抑えコントロールしていきます。病気を診断したら日々の生活の中では、興奮をさせない、高温多湿を避ける、塩分の含まない食事にすることなどが重要です。根治は難しいですが、初期の段階でコントロールが得られると、薬を継続することで何年も元気な生活がおくれます。
湿気の多い季節は耳のトラブルが多くなります。痒くて耳を振る、後ろ足で掻く、床に耳をこする、耳から酸化した油のような臭いがするなどの症状が見られます。耳道の中を見ると赤く腫れて肥厚し狭くなっていたり、赤黒いグリス様の耳垢が観察できることがあります。このとき耳道内では細菌やマラセチアによる二次的な感染を起こしていることが多く、高温多湿、たれ耳、耳道内の被毛、綿棒などによる掃除の刺激はこれを助長してしまいます。細菌やマラセチアは耳など皮膚に常在しているので、増殖して繰り返し悪さをすることがあります。慢性・再発性の場合、アトピーや脂漏症などの体質が基礎にあることが多いです。外耳炎が悪化すると、痛みが出てきたりして耳の処置をとても嫌がるようになり、手入れが困難になると共に、耳道が狭くなり薬が耳の奥まで行きにくくなるので早めに動物病院に相談しましょう。
連日厳しい暑さと高湿度が続き、しばらくは熱中症に注意が必要です。熱中症とは高温環境で生じる様々な体の不調を総称して呼びます。犬や猫は人と違い汗をかくことができず、呼吸数を増やすことで体温を下げます。したがって、短頭種や長毛種、心疾患や上部気道疾患を持つ子は特に注意が必要です。熱中症の症状は多岐にわたり、見るからに呼吸が荒い、触れると明らかに体が熱い時には、すでに高体温によって全身の臓器に障害が出て緊急治療が必要になることがあります。熱中症にならないように対策するのが一番ですが、ペットの異変に気づいて熱中症が疑われたら、病院に連絡して指示をもらいましょう。この時、体温を測定して40度を超えている場合には、水分補給や涼しい場所に移動するだけでなく、積極的に体温を下げる必要があります。濡れたバスタオルで体を包み扇風機などで風を当てると効果的です。
人がペットに食べるものを与えることは、コミュニケーションでもあり、一緒に生活を分かち合う絆の証でもあります。また、現代ではペットの食事は飼い主が質や量を考え、バランスよくとれるように管理する必要があります。ペットの食事は研究、開発され続けており膨大なレパートリーがあるので年や健康にあっているものを飼い主だけで考えるのは難しいかもしれません。しかし、おやつ中心の食生活にしたり、人の食事を与え続けていると問題となることがあります。肥満や尿路結石症、糖尿病、膵炎になったり、その他病気がわかった時は体のケアのために良い食事をとってほしいものですが、より好みをして何も食べてくれず困ってしまうということもあります。人とペット共に楽しく生活できるよう、健康保持を目指して食事について考えていきましょう。病気の時の食事の処方は動物病院に気軽にご相談ください。
気温や湿度が高くなると身をひそめていたノミ・マダニは活発になります。ノミは爆発的な繁殖力で寄生するとあっという間に増えます。マダニは持続的に吸血するので体が豆粒くらいになるまで何倍にも膨れます。ノミでは唾液によるアレルギー性の皮膚疾患で広範囲に強い痒みがでたり、マダニは様々な病原体を媒介します。人でのSFTSなどの感染症は記憶に新しいと思います。ノミ・マダニは外に行く子はもちろん、室内で生活している子にも持ち込まれた虫が寄生することがあります。ノミは素早くて見つけにくいですし、マダニは皮膚について吸血するので急にイボができたと思ってしまうこともあります。ブラッシングやシャンプーも有効ですが、ノミ・マダニは薬で予防することができます。背中にたらすものや食べるものなど様々な予防薬があります。3月〜11月、特にこの時期是非予防することをお勧めします。
アレルギーとは、本来体を守るための抵抗力である「免疫」が異常な反応(暴走)をしてしまい、体に害を及ぼしてしまうことです。その原因は、本来は無害なはずの花粉・食事・ダニ・雑草などに存在するタンパク質でこれらをアレルゲンと言います。菌やウィルスなど有害なものに対する反応は防御、本来無害なはずの物質に対する有害な反応がアレルギーというとわかりやすいかもしれません。アレルギーを起こした時の症状は、痒み、嘔吐や下痢、さらには命に関わる状態に陥るものまで様々です。例えば、蕁麻疹、アナフィラキシーショック、喘息、アトピー性皮膚炎、その他にも貧血や腎臓が悪くなるアレルギー反応がありその容態は多岐にわたります。アレルギーが疑われる場合は、体質や生活環境の影響を考えます。血液検査でわかるアレルゲンもあるので、食事などを含め、その子に合った対処方法を考えましょう。
年度もあけ、狂犬病の予防接種を中心にワクチン接種を考える方が多くなってきたと思います。「ワクチンを打って病気を予防することが大事」と一言簡単に言えてしまいますが、色々な背景があります。ワクチンとは、自然界のウィルスや菌の中身を改造して、形は同じですが弱毒または不活化したものを体に接種し、形を体に記憶させ、自然界の強毒ウィルスや菌の攻撃に備えるものです。これにより、少しの攻撃ならなにも症状を出さずに体の中で撃退できるようになりますが、大量の病原体には苦戦することもあります。特に子供やお年寄りは備えがないと攻撃に耐えることができないことがあります。大量に病原体が増える一番の場所は動物の体の中、特にワクチン未接種の子なのです。さらに、ドッグランやホテルなどの動物が大勢集まる場所では、流行の危険があるので、ワクチンの接種がお願いされているのです。
くしゃみや鼻水、目やに、咳といった代表的な風邪の症状は人も猫も似ていますが、原因となる病原体は違います。そのため飼い主から猫に、猫から飼い主には感染しません。猫の風邪はウイルス、細菌、クラミジアなどが主な病原体であり、感染すると口内炎、結膜炎、鼻炎、咽喉頭炎などが起こります。伝染力が強く、多頭飼育では非常にリスクが高くなります。一旦感染すると、鼻づまりや口内炎、舌潰瘍の不快感から食事をとらず、脱水し衰弱することもあります。特に子猫や老猫は免疫が不十分で重篤化することがあり、早期の治療が大切です。その中でもヘルペスウイルスは状態が回復しても潜伏感染(悪さはしないが体の中に隠れている)し、免疫が弱った時にまた悪さをすることがあります。ワクチンはこれらのウイルスの予防、症状を軽減する大事な手段で、特に子猫や老猫はぜひワクチン接種をお勧めします。
歯垢・歯石が付着し、歯肉炎が起きて口内に違和感や痛みを感じるようになると、硬い物を避ける・前足で口を拭ったり、床に擦り付ける動作をする・食物をよくこぼす・突然食べるのを止めて声をあげる、涎が大量に出て口から垂れているなどの症状が見られますが、口臭が強くならないと、なかなか気が付きにくいものです。歯周病は、歯根膜が破壊されて細菌が心内膜・腎・肺などにばらまかれるため、全身性疾患の発生にも深く関わっています。その他、犬の高齢化が進む中、慢性化と共に根尖部に炎症が波及すると、顎の骨の病的骨折や、顔が腫れたり、鼻血・結膜炎など、様々な深刻な問題になることがあります。痛みがあると、怒りっぽくなったり、容易に口内を見せてくれなくなります。子犬の頃から、口の中を触ったり、ガーゼや柔らかい歯ブラシでブラッシングの習慣をつけておくことを、お勧めします。
2018.1月 血液検査で見る糖尿病
糖尿病は血糖値が異常に高くなり(高血糖)尿に糖が排泄された状態で、犬では特発性糖尿病、猫では2型糖尿病が多く見られます。スクリーニング検査で高血糖でも、糖尿病以外の多くの要因で高血糖が見られることがあるので鑑別が必要です。普段血糖値は膵臓からのインスリンの分泌によってコントロールされているので食後などでも高血糖は起こりません。しかしインスリンの分泌が少なかったり、作用を抵抗するようなことがあるとうまくコントロールできなくなります。この時高血糖が続くと蛋白に糖がしみ込んでしまうのを利用した過去2週間の血糖の推移の指標になるフルクトサミンを測定します。糖尿病のコントロールにインスリン注射は必要不可欠ですが、投与量が非常にシビアで、打ちすぎによる低血糖などを避けるために一日の血糖の推移を把握することは非常に重要なのです。
甲状腺は副腎と同様にホルモンを分泌する器官です。犬では甲状腺機能減退症、猫では甲状腺機能亢進症がよく知られています。甲状腺ホルモンは代謝を高めるホルモンで減退症では代謝が落ちるので左右対称性の炎症のない脱毛や食事の量を増やしてないのに太る、やたらと寒がる、さらに進むと粘液水腫と言って泣いているような顔になります。亢進症では代謝が活発になるのでたくさん食べているのに痩せてくる、じっとしていられないなどの症状があります。甲状腺ホルモンを評価するためにはサイロキシン(T4)や、遊離サイロキシン(fT4)とトリヨウドサイロキシン(T3)があります。しかし日内変動やストレス、他の疾患などで数値が変動するため脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)を同時に測定して甲状腺機能の評価を行います。いずれも薬によりコントロールできる病気です。
副腎は内分泌を行う臓器で、内分泌液をホルモンといいます。ホルモンは血液によって標的臓器に運ばれ、極微量でその臓器の成長や活動を調節しています。副腎は脳の視床下部からのホルモンによって調節され、一定のホルモン(ステロイドホルモン)量に調節されています。副腎疾患は副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)や副腎皮質機能低下症(アジソン病)などがあります。肝臓疾患や腎臓疾患のように見えない病気を検査によって発見するのとは異なり、ルーチンな検査(臨床症状、スクリーニングの血液検査)や内分泌検査によってその検査に矛盾がなければ確定診断ができます。ホルモンの検査は様々な要因(日内変動、飼育環境など)により測定値が変動するため、脳下垂体からの副腎刺激ホルモン(ACTH)を外的に投与し、最大限に副腎に刺激を当てた状態でコルチゾールの濃度を測定して診断します。
腎臓の評価は糸球体濾過率が最も正確な指標となります。腎臓は尿毒を尿として排泄することも大事なことですがその他に水分保持や排泄を調節しています。またミネラルのバランスの維持、貧血に反応してエリスロポエチンという造血ホルモンを分泌します。血液中のBUN犬9〜30猫15〜33r/dl(尿素窒素)の測定やクレアチニン(犬0,5〜1,4猫0,8〜2,1r/dl)で評価しています。最近ではSDMA(0〜14μg/dl)という腎機能のバイオマーカーが糸球体濾過率の優れた指標として検査ができるようになりました。急性腎不全と慢性腎不全では治療法も異なり見分けが必要となります。臨床症状に加えて、BUN、クレアチニン、脱水や貧血の有無(Ht、TP)、電解質(Na K CL)、ミネラルの測定などが評価の対象となります。命に関わる重大な臓器で、治療の継続の必要な病気になることが多くなります。
胃腸疾患は下痢、嘔吐、食欲不振、発熱などの臨床症状で診断することが一般的です。寄生虫やウイルス、細菌感染では便の検査が有効になります。特殊な病気には蛋白漏失性腸症があり、この時に症状はほとんど出さずに血液検査でTP(血清総蛋白)やALB(アルブミン)が低値を示すことがあります。同様な検査結果を示すものに蛋白漏失性腎症がありますので鑑別が必要になります。蛋白漏失性腸症は、炎症性腸症やリンパ性プラズマ性胃腸炎や腸リンパ腫に分かれます。また特発性のリンパ管拡張症もあります。最初は無症状ですが時々の嘔吐や下痢があり体重減少が見られ、続いて全身のむくみが見られることもあります。さらには胸水や腹水を見ることもあります。診断には内視鏡検査による病理組織検査が必要になります。難治性なことが多くステロイドや免疫抑制剤などで、コントロールすることが目標です。
膵臓は消化酵素やインスリンを分泌する臓器です。胃で粥状になった食物は十二指腸で胆汁と膵液によってさらに分解され小腸から栄養として吸収されます。膵臓からは蛋白分解酵素(トリプシノーゲンなど)、糖質分解酵素(アミラーゼなど)、脂肪分解酵素(膵リパーゼなど)が分泌されます。代表的な病気としては急性膵炎や膵外分泌不全や糖尿病などがあります。それぞれの症状に加えて血液検査で病態の把握や確定をおこないます。急性膵炎ではスクリーニング検査中でアミラーゼやリパーゼの上昇とともにALT、AST、Tbil、WBCなどの上昇を見ます。犬膵特異的リパーゼ(Spec cPL)や犬トリプシン様免疫反応物質(c−TLI)などで診断します。また糖尿病では血糖値(GLU)や糖化蛋白(フルクトサミン)や尿検査(ケトン体や尿糖)で診断します。いずれも臨床症状と合わせて総合判断が必要です。
肝臓で作られた胆汁は胆管を通って胆嚢に集められ、ここで濃縮されます。胆嚢は食物特に脂肪の刺激を受けて胆嚢が収縮し胆管の出口を開いて胆汁を十二指腸に分泌します。胆汁は、その主成分である胆汁酸が脂肪分子の大きな集合体を乳化してバラバラの脂肪分子にして間接的に消化、吸収を助けます。胆嚢炎などでは腹痛に下痢、嘔吐などを伴います。この時血液検査ではWBCやALP(15〜162U/L)、GGT〜9U/L(γーGPT)が上がります。さらに胆汁の鬱滞や炎症により、胆管や肝細胞内胆管にダメージを受け、ALT、AST、TBILなども上昇してきます。総胆汁酸の測定は食前(〜9μmol/L)食後(〜14,9μmol/L)によって正常値が異なります。これは胆嚢、腸、門脈、肝臓、胆嚢の順で循環するため末梢の血液には多くは含まれない為です。胆泥などでは慢性的にALPやGGTの上昇を見ます。
健康診断などで肝酵素活性を用いて評価します。ALT(GPT)、AST(GOT)、ALP、GGT(γ-GPT)の4つが代表的です。肝臓は腹部の臓器の中で一番大きく、その仕事内容も様々です。主な仕事は消化管で吸収した栄養の代謝、毒素の解毒それに胆汁の生産と分泌などがあります。肝細胞に特異的に含まれる酵素にALT(犬34〜120)とAST(犬17〜45)があり、正常でも上記程度壊れている(代謝されている)つまり肝障害や毒によって多くの肝細胞が壊れると数値が高くなり肝臓がどのくらいダメージを受けているかわかります。しかし肝機能の評価は不十分で、評価するには食前、食後の総胆汁酸やアンモニアの測定と他の数値の動向を予測します。本当に肝臓が悪くなると、TPやAlb、BUNが下がり、T−Bilが上がります。このような状態の時には黄疸や腹水が見られます。
2017.5月 血液検査どうしてするの
血液の中に多くの情報があり、細かく分析することで病的状態にあるのか正常な状態にあるのか我々獣医師が判断します。参考基準値がありその中にあればほぼほぼ問題はないと思います。健康診断などで数値を見ることも多くなり基準値を超えると心配になり、生活の習慣を改善しなければいけない?と思います。健康診断での血液検査と病的な状態での特殊な検査項目と分けて考えましょう。一般的にはスクリーニング検査といい病気を見つけるための一つと考えてください。しかしいろいろな病気の中には血液検査には異常は示さないことあります。特に腫瘍性疾患などでは末期の各臓器の機能に障害を起こすと異常値となります。それぞれに特異、不得意がりますのでレントゲンやエコー検査、MRI検査、病理組織学的検査などを駆使して病気の本質を見つけることが大切なことと思います。
病気とは、生き物の解剖学的構造、機能を変化させた結果、症状あるいは徴候を作り出すと考えられています。正常と異常を量的概念で正常値や異常値などと数値化され、症状などで表現して「病気である」とされます。しかし医療に携わる側と本人、飼い主側では主観的な症状と異なることが多くあると思います。この患者の抱えている問題点を発見、認識、そして解決することが、医療の主なものと考えております。飼い主や家族、看護師や獣医師皆が問題点に気づき、解決策にはどのようなものがあるかを探ることが大切ではないでしょうか。客観的な変化を把握するために患者情報、主訴、現病歴、既往歴、身体的検査などに加えて血液検査、尿検査なども必須のデータとして扱われることが多くなってきました。物言わない家族にとって、早い段階で変化に気づき気軽に相談できる医療が大切だと思っております。
長期間糞便が停滞すると持続的に水分が吸収され、便は大きく硬くなり、排泄が困難になります。大きく硬い糞便により、長期にわたる結腸の拡張が続くと、結腸の平滑筋や神経に不可逆的な変化が起こり、無力的なり、巨大結腸症となります。 便が長時間腸内に溜まっていると、発酵して硫化水素・メルカプタンなどのイオウを含んだガスの発生や、宿便からの細菌代謝産物の吸収による脱水や食欲不振などの全身症状が見られます。骨盤の骨折や会陰ヘルニアなどの場合、外科的に補正されますと良好な経過を得ることができます。しかし猫の特発性巨大結腸症の場合は、宿便の除去および便秘再発の内科的予防が必要になり、長期の食事管理や下剤の使用でも効果が認められず、浣腸あるいは手指による排便が必要になります。なお猫では外科的治療(結腸切除)の成績が良いので積極的に提案しています。
2017.2月 大腸炎 大腸性の下痢は、通常頻繁な排便(通常の3倍以上)、ときとして過剰な粘液や潜血を含む少量の便の排泄、しぶり等を特徴とし、嘔吐が見られることがあます。前にお話をした細菌性腸炎に伴うことが最も多く、食事性や寄生虫性、特発性炎症性腸疾患、薬剤誘発性大腸潰瘍、代謝性及び内分泌性疾患、大腸の運動障害(過敏性大腸炎)などの原因で起こります。多くは抗菌薬、駆虫薬や整腸薬などの治療によく反応します。慢性的な大腸炎や炎症性腸疾患では、いろいろな治療法を試して、その子に合った治療法を見つけ出す必要があります。大腸性下痢では細菌や細菌毒による腸粘膜の損傷が主な病態なので、抗菌薬の使用に合わせて、粘膜の再生を促す為に絶食や低繊維食などが勧められます。また慢性の大腸炎では腸の運動を正常に保つために高繊維食を勧めることがあります。また低アレルゲン食を勧めることもあります。
2017.1月 難治性下痢(炎症性腸疾患)
犬猫の炎症性腸疾患(IBD)の発生機序および病態は明らかではないが、人のIBDとは同様に考えられております。IBDは遺伝的な素因をもつ個体における腸粘膜の免疫的な異常反応であり、食事などの環境因子、腸内細菌因子、そして腸管免疫系の複雑な相互作用の結果、慢性の消化器症状が3週間以上続くこと。一般的な対症療法には完全に反応せず、他の疾患(膵炎、肝胆道系疾患、腫瘍系疾患など)がなく、病理組織的検査で消化管粘膜の炎症性変化が明らかであり、一般的に免疫抑制療法に反応する疾患です。以上のように診断がなかなか難しく、治療に関しても、経験的なことで食事の変更や抗生剤の使用により抗原量を減らすこと、免疫抑制剤や抗炎症剤を用いて、腸粘膜の炎症を抑えることが主体となります。個体により異なった長期的あるいは生涯にわたる根気強い治療が必要になります。
2016.12月 細菌性腸炎食中毒などで、病原性の細菌感染による下痢は理解できますが、クロストリジウムでは正常細菌叢を構成する細菌でありますが、増殖するときに芽胞を形成した時に産生される蛋白毒素により腸炎をおこします。キャンピロバクターも健常な腸管内に認められますが、腸上皮内に侵入し毒素様物質を産生すると腸粘膜が障害され下痢を起こします。あるいは腸粘膜にあるIgA(免疫蛋白)が粘液、粘膜バリアに異常をきたし細菌の侵入をゆるし腸炎を引き起こすとされています。腸内に毒素があれば、早く体外に排泄することが大事なので生体の防御反応で下痢を起こすものと考えられます。症状としては水様性の下痢や粘液便、血便、しぶりなどが見られます。発熱や食欲低下や嘔吐なども見られます。腸の運動を止めたり、無理に食事を与えると悪化することがあり、水分の補給や抗生物質の投与が必要になります。
2016.11月 十二指腸潰瘍ステロイドや非ステロイド系の鎮痛解熱剤(NSAIDs)などの投与が発症原因として一般的ですが、ストレスや胃酸の分泌増加や肝不全、腎不全、急性膵炎など代謝性疾患でもみられます。人のアスピリン、フェニルブタゾン、インドメタシン、ケトプロフェン、イブプロフェンなどの鎮痛解熱剤の誤食などで見られ、血液の混ざった嘔吐や食欲不振、タール状の排便などの症状が見られます。鎮痛解熱剤では直接粘膜障害に加えて胃保護プロスタグランジン(PGF2、PGI2)の合成を阻害することで潰瘍が形成されます。したがって併発疾患がある場合にはまずは、その治療を行い胃液分泌抑制剤や胃粘膜保護剤などのほかに合成プロスタグランジンの使用などで多くは改善するようになりました。しかし高容量のステロイドや鎮痛解熱剤の使用時には、胃粘膜保護剤などの予防的な処置が必要です。
2016.10月 急性腸炎
下痢、軟便や血便、粘液便などの症状がみられます、また嘔吐などの胃の症状も伴うことも多くあります。ウイルスや細菌の感染が代表的で、洗剤や腐敗した食事の摂取など誤飲や誤食も原因の一つとなります。食事の変考やストレスなどちょっとしたことで起こることも多くあり、一般的には対症療法で様子を見ます。胃腸の負担を減らす為に食事は低脂肪低繊維食、大腸性下痢では高繊維食が有効な場合があります。成犬では半日から一日の絶食が有効です。腸内の正常細菌叢が乱れると、症状が悪化し、治癒が遅れることが多く、抗生剤や輸液療法が必要になることがあります。腸壁の粘膜バリアが破壊され粘膜がはがされ粘血便が出るようになると、下痢の時に食べていたタンパク質に対してアレルギーを作り出す危険があります。したがって、下痢の時は食事の注意が最も大切で、水分補給や抗生剤などが必要となります。
2016.9月 胃内異物誤食による胃内異物が一番多く、ボール、おもちゃ、桃の種、靴下、タオルなどいろいろなものがあります。特に2歳未満の若い犬では遊びの中でおもちゃを飲み込んだり、子猫では糸やひもなどの糸状異物が多くみられます。食道の太さよりも小腸のほうが細い為、胃内にとどまり、嘔吐や食欲不振、胃炎などの症状をだします。また異物が存在しても嘔吐が見られないことがあります。治療としては、催吐剤の使用では針などの鋭利なもので吐く時に、事故が起こる可能性が高く禁忌とされています。また処置後重度の胃炎を起こすことが多くあります。内視鏡での摘出は3センチまでの小さなものは可能ですが、ゴルフボール大以上になると摘出は困難になります。タオルのようなもので、切れかかった一部が腸のまでつながっている場合もあり開腹手術が必要になることが多くあります。誤食には注意しましょう。
胃の運動低下に伴う胃内容の排泄時間の延長は、比較的多く診られる疾患です。食欲不振、昨晩食べた食物を朝に未消化の状態で吐き出す等の症状が見られます。胃拡張、胃炎、胃潰瘍などの疾患時だけでなく、電解質異常、代謝性疾患などでも認められます。胃の運動性は神経的でなく消化管ホルモンによっても調節されているため、胃の運動低下の病態は複雑であると考えられます。さらに膵炎や小腸疾患でも胃の運動障害が起こります。診断には胃のバリウム造影検査を行い、正常なら5分〜15分で胃より排泄が始まり1〜4時間で胃からの排泄が完了するといわれています。胃の閉塞や膵炎を除外して、胃の運動調節剤や胃液分泌抑制剤などの使用で反応を観察します。主に胃炎や胃潰瘍、腫瘍、代謝障害などの基礎疾患によって引き起こされていることが多いことから原疾患の診断、治療をあわせて行う必要があります。
胃炎は原因を特定できない場合が多く、臨床診断名として広く使用されています。嘔吐を主訴とした場合は、感染症や異物、中毒等よるものが一般的です。ヘリコバクター性胃炎や炎症性腸疾患(IBD)の一部の胃炎なども含まれ、これらは慢性的な嘔吐が見られます。嘔吐は生体の防御反応のひとつで異物や毒物の摂取による嘔吐があり、無理に止めるべきものではありません。胃の粘膜表面は粘膜バリヤーで保護されていますが、炎症部位では胃酸の刺激によりさらに炎症が悪化することがあり、この悪循環を断ち切ることが大事になります。胃炎で嘔吐がある場合には食事の制限と、消化が良い低脂肪食が勧められます。また脱水が起こることが多く、水を飲んでも吐いてしまう場合には注射による水分補給や薬剤の投与が必要になります。胃酸による嘔吐の再発は多く、胃粘膜保護剤や制酸剤などの投与が必要となります。
2016.6月 食道炎食道炎は薬や化学物質などの誤飲、過度の嘔吐や胃酸の逆流(逆流性食道炎)などでおこり、吐き癖のある高齢の猫に多く見られます。食道炎は比較的発生頻度が多いと考えられています。食欲不振、流涎、嚥下運動の増加、発咳などの症状が見られますが、はっきりとしない場合もあり、見過ごされることが多くあります。重度の炎症がつづくと粘膜の瘢痕収縮がおこり食道狭窄などの不可逆的な疾患へとなり、治療が困難となるため、早期の対処することが必要です。確定診断には、食道のX線造影検査や内視鏡検査が必要になるため、過去の病歴や問診で食道炎と仮診断して治療することが多くあります。食道粘膜を保護するスクラムファートの水剤や、胃酸の逆流の為に起こるものでは胃酸分泌抑制剤や消化管運動改善薬などが考えられます。食道の運動性が弱い猫では、食器の位置を高くして食事を与える方法も有効です。
食道は口で噛み砕かれた食物を胃に送る管で蠕動運動により食物が胃へと送られます。食道内異物や、食道狭窄、食道炎などで食道の通過障害の結果として食道拡張を示すものと、食道の機能障害の結果、巨大食道を起こすものがあります。先天性の特発性巨大食道症と何らかの原因により引き起こされた後天性の食道症があります。犬の後天性巨大食道症の原因の一つとして重症筋無力症の局所型のものがあり、アセチルコリンレセプターに対する抗体産生により、筋肉の収縮ができなくなる疾患です。その他に多発性筋炎,副腎機能低下症、甲状腺機能低下症で見られることがあります。また食物の逆流により誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高い病気です。主な症状は吐出(食べてすぐ前触れなく吐き出す)、食後の慢性的な嘔吐などがあります。食事のとき食物を高いところに置き重力の力をかりて胃に落とすことが有効です。
犬、猫の排尿障害には神経原性障害性と非神経原性とに分けられます。排尿は膀胱の括約筋と膀胱三角(内尿道括約筋)と外尿道括約筋がうまく連動して、膀胱内圧が上がり排尿したいと脳で感じ内外の尿道括約筋を弛緩させて膀胱を収縮させ排尿が起こります。尿失禁と排尿ができなくなるものと、膀胱収縮不全(膀胱アトニー)を起すものとあります。高齢での馬尾症候群(腰椎と尾椎の間の不安定など)では神経原性で弛緩性の麻痺がおこり尿失禁や膀胱アトニーとなり、膀胱は大きくなり尿があふれて、尿失禁が見られます。また。交通事故による脊髄損傷では内尿道括約筋弛緩が起こらず膀胱内圧が上がり尿道内圧を超えた分が少量排尿されます。その後反射性排尿となりちょっとした刺激で尿失禁をおこします。これらなかなか治療は難しく、人間の手で圧迫排尿や、カテーテルによるは排尿が必要となることがあります。
犬の膀胱腫瘍は悪性腫瘍が多く、ほとんどが移行上皮癌です。一部の殺虫剤、除草剤、抗がん剤、肥満がその発生の要因と報告されています。特定の犬種ウエスティー、シェルティー、ビーグルなどに発生が多く見られます。膀胱腫瘍の症状は血尿、頻尿、排尿困難やおもらしなどがあり、膀胱炎の症状が重なることが多くあります。抗生物質の治療にも一時的に改善が見られます。しかし完全な改善が見られず、再発を繰り返します。診断には尿検査(尿道カテーテルを用いた細胞診を含む)、レントゲン検査や超音波検査、血液検査、レントゲン造影検査やCT検査などが必要になります。非常に悪性度が高いことが多く早期の外科処置が大切になります。しかし再発率も高く発生部位によっては抗がん剤治療などの内科的な治療が主になります。骨への転移や尿閉、排尿痛などつらい症状もあり、QOLの維持が大切になります。
猫の下部尿路疾患は、ストラバイト結晶が砂状となり炎症物質と絡み合い雄猫の尿道に栓を作り尿閉が起こるとされてきます。それ以外にも特発性膀胱炎とされ、その原因を特定することが難しい場合が多くあります。トイレ以外での排尿、排尿の回数が増えるが少ししか出ない、排尿時の疼痛、尿が赤い、排尿姿勢をとるが尿がでないなどの症状がみられます。猫の特性から尿の濃縮力が高く尿比重が高いことが多く、粘膜への刺激が強くあるのではないかと考えられています。ドライフードを好む猫に多くみられます。療法食への変更や環境の改善などで飲水量を増やすことを考えてもらいます。猫に水を多くの飲みなさいといってもなかなか難しいことです。食事内容や水の飲み方など生活の習慣に固着することも多く、小さい時からいろいろな食事や環境にも対応できるように育ててあげましょう。
細菌性膀胱炎では、大部分が消化管あるいは体表の細菌が尿道を経て上行感染することで起こります。生体の防御機構(膀胱からの排尿、粘膜バリア、尿の濃縮、構造)が何らかの要因により不備が起こると発症するとされています。頻尿、おもらし、血尿、排尿困難、排尿痛や発熱、食欲不振などが見られます。高齢の場合には症状がはっきりしないことが多く、異常に尿の臭いが強くなることがあります。診断には、適切な尿の採取による尿検査が必要で、再発やなかなか治らない場合には防御機構の不備以外に他の疾患が関係している可能性があります。例えば膀胱結石や腫瘍、前立腺炎があると細菌性膀胱炎を併発するがあります。適切な抗菌薬の使用により改善は容易ですが、耐性菌の発現が多くある疾患のため、頻回の尿検査と細菌培養と感受性検査が必要になります。兆候が見られたらまずは尿の検査をお勧めします。
犬、猫の結石はストラバイトとシュウ酸Caが多く腎盂、膀胱で形成された結石が尿管や尿道でつまり、尿の排泄が阻害される為に、急速に病状がすすむと腎不全に陥る怖い病気です。尿管結石では重度の腹痛や背部痛により食欲廃絶、元気消失などがみられます。左右の尿管結石が同時に起こると急速な腎不全となります。尿道結石では排尿姿勢をとりますが排尿がなく、次第に膀胱中に尿が充満し2日以上の経過では下腹部の疼痛と悶絶状態となり、重症になると意識レベルの低下がみられます。いずれも症状の悪化が早い為、閉塞を解除することがとても大切です。その後、ストロバイト結石の場合では内科的に食事療法や薬による溶解療法が考えられます。しかしシュウ酸Ca結石では溶解療法はうまくいかない為外科的な摘出が必要となります。部位により治療法が大きく異なりますので適切な診断が大切です。
2015.11月 腎盂腎炎について
腎盂腎炎は、尿路感染から併発することがほとんどあり、膀胱から尿管、腎臓への上行感染となります。発熱、食欲不振、頻尿、血尿、排尿障害に腰部の疼痛などが見られます。さらに腎不全に陥る危険があり早期の発見、治療が大変重要になります。腎盂腎炎は尿路感染(大腸菌、ブドウ球菌や連鎖球菌などの腸内細菌、および緑膿菌など)から起こることがほとんどですので慢性の膀胱炎や再発性の膀胱炎では、細菌感染の防御メカニズムの不全が多く関与しています。例えば腎盂や膀胱内結石、尿管結石、脊髄などの障害による膀胱の収縮不全、前立腺の細菌感染、耐性菌の出現などが考えられます。いろいろな疾患に伴い発症することから、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、尿検査、尿の細菌培養検査などが必要になります。治療は基礎疾患の改善に加えて適切な抗生物質や抗菌剤の長期の使用が必要になります。
2015.10月 慢性腎臓病について
慢性腎臓病は各種の糸球体疾患や尿細管障害と間質性腎炎、アミロイドーシスなどが一般的な原因と考えられ食欲不振、多飲多尿、体重減少などが見られます。加齢と関連が深く、高齢の動物ほどその頻度が高くなります。また結晶尿(シュウ酸Caやストラバイト)が長く排泄されると尿細管上皮や基底膜、間質の細胞に悪影響があると考えられています。腎臓実質の障害は不可逆性であり早期の発見と病態のコントロールが生存期間の延長に直結します。日常的に使用されるマーカーは糸球体濾過値の指標であり、それらは血液検査(血中尿素窒素、クレアチニンなど)、尿検査(尿比重の低下や蛋白の上昇、円柱、結晶の有無)、尿中蛋白/クレアチニン比や血圧などによって比較的早期に腎機能を把握します。治療は腎臓への障害の回避と腎組織の保護が目的で食事療法やACE阻害薬の投与、水分補給が必要になります。
2015.9月 犬の糸球体腎症
糸球体の疾患は二次的に尿細管、間質、血管などにも異常が見られ、糸球体腎炎は犬の進行性腎不全の一般的な原因です。原発性糸球体腎炎は腎臓だけを侵し、5歳以上の犬に多く、この疾患の発生には遺伝的因子が重要な役割を果たしていると考えられています。二次性の糸球体腎炎は、子宮蓄膿症、全身性紅斑性狼瘡、心内膜炎、伝染性肝炎、悪性腫瘍、フィラリア症などの他の組織の炎症性疾患の過程で免疫複合体が糸球体の毛細血管に沈着して障害を起こします。ネフロン(例えるなら尿を作る機械)は再生能力の限られた複雑な構造体のため、いったん壊されると新しく機能を営むネフロンは産生されません。糸球体腎症の治療は難しく、人で副腎皮質ホルモンの使用した治療が多く報告されていますが、犬の糸球体腎炎の大部分は免疫介在性に発生しますが、免疫抑制療法はその効果は予測できず期待できません。
2015.8月 尿検査について
腎臓などの泌尿器や内分泌疾患で反映してきます。尿の色や混濁の有無は、膀胱炎や血尿、血色素尿症(玉ねぎ中毒など)で変化がみられます。尿比重は、水分の排泄に関係があり、水を多く飲むと比重は低くなります。特に多飲多尿を起こす疾患や膀胱結石では重要となります。尿のPHは結石の成分に関係があります。尿たんぱく検査では、腎臓でのタンパクの漏出に関係があります。尿糖は糖尿病や出血で検出されます。ケトン体は重度の糖尿病や飢餓状態が長く続いたときに検出されます。ビリルビンは肝障害や溶血性疾患で検出されます。潜血は見かけ上正常な色でも赤血球や溶血性疾患で検出されます。亜硝酸塩は細菌が出す物質で重度の細菌性膀胱炎で見られます。さらに尿沈渣では結晶や細菌や赤血球や白血球、腎臓から排出される円柱などを顕微鏡で観察します。ものを言わない動物にとっても大切な検査です。
2015.7月 犬のアトピー性皮膚炎について
犬のアトピー性皮膚炎において、これまでハウスダストマイト(非常に小さなダニ、死骸などが空気中に浮遊しやすいダニでコナヒョウニダニ、ヤケヒョウヒダニなどがあります。)が抗原として最も高頻度に認められています。単独または複数のアレルゲンによって皮膚炎の程度が悪化します。しかしノミに対する抗原特異的IgE検査において感度が低く、いままで一度もノミの感染が確認されていなくとも、ハウスダストマイトとノミの間に抗原交差性も存在すると考えられています。そのため初めてのノミの寄生においてもアレルギー性皮膚炎の症状を悪化させるものと考えられています。ノミの寄生は、その他のアレルギー性皮膚炎においても悪化の要因になりますので、予防は非常に大切になります。予防薬には、滴下するものや飲み薬がありますので、お散歩に行くワンちゃんにはあらかじめ予防をしてあげましょう。
陽気もよくなり外出する機会が多くなり、公園などの散歩でノミやマダニの寄生を受けることがあります。ノミでは動物の接近による断続的な光刺激、温度変化、二酸化炭素を感知して宿主に寄生します。寄生したノミは直ちに吸血をはじめ、ネコノミの成虫はいったん寄生すると宿主を離れることなく吸血と産卵を続けます。この時、単に刺咬による痒みだけでなく、アレルギー性皮膚炎や瓜実条虫症を起こさせる原因となります。人にも刺咬し、強い痒みや丘疹、水泡などを生じさせます。ノミアレルギー性皮膚では刺咬部位と皮膚炎が見られる部位とは必ずしも一致せず、わずかなノミの唾液だけで強い皮膚炎をおこし、動物に多大なストレスをあたえます。マダニ類も様々な病原体の媒介者になるため、寄生を予防することが最も大事なことです。背中に滴下するものや、飲む予防薬がありますので使用をお勧めいたします。
フィラリア検査の時期がやってきました。なぜ検査が必要なの?犬のフィラリア(犬糸状虫)は18p〜25pの糸状の寄生虫です。右心室のすぐ先の肺動脈の起始部に寄生する虫です。ワクチンのように免疫を利用して予防することができません。そのため蚊に刺されて間もない時期の感染子虫を飲み薬や背中に滴下する薬などで殺虫する薬を投与する必要があります。このときすでにフィラリアに感染していると、ミクロフィラリアという子虫も薬で殺してしまいます。ミクロフィラリアは血液一滴の中に数十匹いるため一気に死ぬことにより、犬がショックを起こすことがあるからです。そのため夏を経験した犬は血液検査でフィラリアの感染の有無を確認してから予防薬(駆虫薬)の投与をしてください。フィラリアは感染してもすぐには症状を出しません。前年度の予防がしっかりできていたかの確認もかねて行ってください。
2015.4月 会陰ヘルニア
会陰ヘルニアは、未去勢の中年齢以降の雄犬に多くみられる。肛門周囲にある筋肉(肛門挙筋、尾骨筋など)の委縮により、排便時のいきみや、吠えることによる、腹腔内圧の上昇に、骨盤隔膜の強度が耐え切れずに直腸の拡張や変位などが生じる。さらに病態が進み怒責などによって腹腔内圧がさらに上昇して腹腔臓器(膀胱、前立腺など)が肛門の横にはみだし、膨らんだ状態を会陰ヘルニアという。排便障害のため直腸憩室ができ、強いいきみがないと排便できず、さらに進行し膀胱や前立腺が脱出すると排尿困難となり、緊急手術が必要になります。本症は高齢犬に発生するため、温存療法を選択して、経過観察を続けてもヘルニア孔の拡大に伴って病態が悪化するため、早期の外科的整復が必要になります。多くの手術方法が紹介されておりますが、再手術の多い病気です。予防のためにも早期の去勢手術をお勧めします。
犬のブルセラ症はブルセラ菌(生物型犬型)が感染しておこります。我が国において家畜におけるブルセラ症(牛型)、(山羊型)、(豚型)は、ほぼ僕滅したとされています。しかし犬では全国で数%の割合で感染していると考えられています。特徴的な症状は示さず不顕性感染となる慢性疾患である。雄犬では陰嚢がはれや委縮があり、時には陰嚢の皮膚炎が見られます。雌犬では妊娠後期に流産や、不妊が見られます。診断には血液検査で特異抗体の検出によって行われます。人にも病原性があり犬から容易に感染しますので注意が必要です。ブルセラは細胞内寄生菌であることから通常の抗菌薬の1〜2週間の投与では除菌ができず、長期間隔離治療が必要になります。除菌の有無は細菌培養検査や遺伝子検査によって確定診断が可能です。ブリダーにおいて重要な病気となりますので定期的な検査をお勧めします。
前立腺疾患には良性の前立腺肥大症、前立腺嚢胞、前立腺炎、前立腺膿瘍および前立腺腫瘍があります。いずれも高齢の去勢をしていない犬に見られます。男性ホルモンであるアンドロゲンの分泌量が減少し血中のアンドロゲンとエストロゲンの濃度の比率にアンバランスが生じ肥大が起こるとされています。 前立腺炎、前立腺膿瘍では直接の原因は細菌感染よっておこり、排便障害や排尿障害、疼痛、発熱があります。前立腺には腺房内への薬剤の侵入を阻止する、血液―前立腺関門があり特定の薬剤しか効きません。しかも肥大があると余計に効きが悪くなります。治療としては去勢手術及び抗菌剤の投与です。高齢で手術ができない場合は抗男性ホルモン剤を使用しますが、病態を悪化させる場合もあり内科的な治療では完治はむずかしです。若齢のうちに去勢手術を行うことで予防することが一番と考えます。
去勢手術をするために動物病院へ来られる場合、繁殖能力を奪う以外に、攻撃性やスプレー行動などの問題行動の予防、猫では喧嘩による咬傷をなくし、猫エイズや猫白血病ウイルス感染のリスクを低下する等の目的があります。又、性ホルモンの関与による前立腺肥大、肛門周囲腺腫、会陰ヘルニヤや腫瘍の発生も抑制できます。さらに、停留精巣(陰睾)では生後60日を過ぎて陰嚢内に下降しない場合は、鼠蹊部の皮下や腹腔内に存在していることが多く、停留精巣となり早期に腫瘍化しやすくその発生頻度は13,6倍と高くなっております。精巣腫瘍では、皮膚の色素沈着や脱毛、痒み、雌化乳房、再生不貧血症状が見られます。腹腔内の精巣腫瘍では発見も遅れ、摘出手術とともに再生不良貧血のリスクも高くなります。6か月を過ぎても陰嚢内に精巣が下降してこなければ早期手術を行うことをお勧めします。
猫の乳腺腫瘍の80〜96%が組織学的に悪性です。さらに50%が複数の乳腺に同時に発生します。これらの挙動は非常に悪く、早期に発見・治療できない場合には、急速に所属リンパ節への浸潤や遠隔転移を起こすことが多いです。犬の場合と同様、早期の避妊手術により予防効果があり1歳までに行った場合には未避妊の猫に比べて発症リスクが86%減少した報告があります。発症と性腺ホルモンの関連は不明な点が多く議論になっています。乳腺の部位にしこりとして発見されますが、小さな粒々が複数触れることもあります。小さくとも様子を見るのではなく動物病院に相談しましょう。早期の外科手術で片側乳腺全摘出手術を進めております。さらに悪性度が高い、ステージVの異常では化学療法との併用が主流となっています。早期の治療以外に有効な方法がないため、避妊手術が最も有効な予防方法と考えます。
2014.11月 犬の乳腺腫瘍
犬の乳腺腫瘍は、最も発生の多い腫瘍です。しかし早期の避妊により発症が極端に減少することから、性ホルモンの関与していることが考えられます。また腫瘍の悪性度とその過剰発現(避妊手術をしていない雌犬での発生率は50%以上とも言われています)との関連は議論のあるところです。10歳以上での発症が多く、胸部皮下、下腹部の乳腺に「しこり」として発見されます。他の皮膚の腫瘍のように針生検での細胞診での良性悪性の判定が不確定なため、生検をかねた摘出手術により、病理組織検査で良性悪性判定を行います。しかし組織学的に悪性であっても必ずしも悪性転帰をとるとは限らなく、早期に対処は、腫瘍の為死亡することを少なくすることができます。ホルモンレセプターの関与があるため乳腺組織が存在すると同時多発することや時期を置いて発症することが多くあるため片側乳腺全摘出を進めています。
2014.10月 犬の膣炎
膣炎は細菌、ウイルス、腫瘍、膣の先天的異常(狭窄や発育不全)外傷等が原因として考えられますが、最も多いのが細菌感染です。
生後4ヶ月から初回発情までに陰部から膿瘍物が排出されることがあり、これを若年性膣炎といい、排膿以外の症状(発熱、元気、食欲不振など)は無く、初回の発情が来た後には治癒してしまうのが特徴です。膣炎は全身症状を示さず局所的に起こるため、犬がしきりに陰部を舐めることで気づくことが多いです。膣炎は一般的に再発が起こりやすい疾患として知られており、慢性化しやすい疾患で発情後の黄体期に子宮蓄膿症に移行する可能性があるため、注意が必要です。本来膣内には正常細菌叢が存在するため、病原性のある細菌は増えることができないのが一般的です。他の疾患などで長期的に抗生物質の使用などや避妊手術済ませた高齢な犬で多く見られますので注意してあげましょう。
2014.9月 犬の卵巣嚢腫
犬の卵巣嚢腫は卵胞嚢腫と黄体嚢腫にわけられます。卵胞嚢腫の多くは多嚢胞性で卵巣が著しく腫大して発生し、黄体嚢腫は卵胞嚢腫の卵胞壁が黄体化を起こしたものであり区別は難しいです。卵胞嚢腫は発情兆候を伴うこともあり、無症状の場合もあります。黄体嚢腫はプロジェステロンの軽度な分泌が見られるため、子宮蓄膿症を伴うことが多くあります。妊娠していない犬でも黄体から分泌される長期間のプロジェステロンの作用によって、軽度な乳腺の腫大が見られるが白色の乳汁は見られず、血漿様の液が分泌される程度では、生理的偽妊娠といいます。しかし著しく乳腺が腫大し白色の乳汁が分泌あり、陰部も腫大した潜在的に卵巣嚢腫であった犬は、手術後に今まで以上に元気になったことから痛みを伴っていたものと推測されることがあります。7歳以上の高齢犬に見られます。早めの避妊手術をお勧めします。
2014.8月 犬の子宮蓄膿症
犬の子宮蓄膿症は非常に多く、特に高齢(7歳以上)の未経産および長く出産していない犬に見られます。これは犬の発情周期に大きく関係があり、発情期(発情出血が2週間程度あります)の後1〜2ヶ月のころに子宮内膜の嚢胞性増殖を伴い細菌感染によって膿が貯留した疾患です。子宮頸管が開放されていると排膿があり、おりものが見られます。頸管が閉鎖していると排膿はありません。したがって、進行状況や細菌の種類によって症状の現れ方は違いますが、一般的には食欲不振、元気消失、発熱、多飲多尿、嘔吐、腹囲膨満などの症状がみられます。多くは手術が必要になり早期の処置が大切です。これは犬特有のことで、発情後の黄体期が妊娠してもしなくとも妊娠期間である2ヶ月間維持されるために、子宮内膜増殖と細菌感染を起こしやすくなります。子犬を必要としない犬は早期に避妊手術をお勧めします。
2014.7月 犬の混合ワクチンについて
混合ワクチンにはコアワクチン(すべての犬に接種するよう勧告されているワクチンのこと)に犬ジステンパー・犬アデノ・パルボウイルスがあります。ノンコワアクチンは犬パラインフルエンザ・犬コロナウイルス、レプトスピラがあります。
30年以上前では犬ジステンパー症が流行し、仔犬も時に適切に接種しないと、野外の強毒ウイルスに感染し死に至るケースが多く見られました。がしかし仔犬のときに免疫が確保されると、自然感染をしても発症せず抗体価は上がり、長期の免疫が得られました。当時は野良犬も多く感染の機会も多くあり免疫の持続もできていたと思われます。しかし現在では接触も少なくワクチンで得られる免疫は1〜3年と言われています。つまり免疫が切れた頃ドックランなど犬の集まるところでは危険になります。ワクチンの免疫持続を考えと毎年の接種をお勧めします。
2014.6月 犬のエキノコックス
エキノコックスはキツネや犬を終宿主とした寄生虫(多包条虫)です。平成26年4月に愛知県の捕獲犬で感染が認められた事例が新聞等で報道されましたが、北海道での報告は古くから確認されています。人の患者は全国で見られ、死に至る恐ろしい病気です。エキノコックスは感染した野ねずみなど捕食した犬の、小腸で成長し成虫となり糞便中に虫卵として排泄されます。この虫卵は土や水などを介して人に偶発的に感染します。偶発的中間宿主である人は幼虫(包虫)が肝、肺、腎、脳などの諸臓器寄生するため、犬とは症状がまったく異なり5〜20年後に極めて重篤な障害を引き起こします。犬では野ねずみを捕食することは少ないと思いますが、感染すると1ヶ月で虫卵を排泄し、2〜4ヶ月で自然と排泄されてしまいます。犬では無症状ですが人に感染すれと危険ですので糞便の始末は普段から適切に行いましょう。
2014.5月 フィラリア検査について
フィラリア検査の時期になりました。毎年この時期に血液検査によってフィラリアの寄生の有無を調べます。現在使用されている検査はフィラリアの雌成虫の抗原を調べる検査のため、感染してから6ヶ月以内は陰性になってしまいます。感染している蚊に刺されると、蚊の唾液から、犬の体に入り3ヶ月間体内移行をして最終寄生部位である肺動脈内に寄生します。そこで3ヶ月成長し成虫となります。雌雄寄生するとミクロフィラリア(3年間このままで生き続ける)を生み出します。血液中(一滴の中に数十匹)に多数いるミクロフィラリアは蚊に刺されて血液と共に蚊の体内に入り、蚊の体内で2週間成長し感染子虫(大人になれる)となり、再度吸血のとき他の犬へと感染するのです。予防薬は蚊に刺されて1〜2ヶ月の小さなときの感染子虫を殺す薬です。適正な検査と投薬でフィラリア感染を予防してあげましょう。
2014.4月 狂犬病予防接種
予防注射の季節になりました。狂犬病は昭和33年以前には日本でも発生があり、先陣の獣医師たちによる集合注射により日本での狂犬病は撲滅することができました。しかし、諸外国では野生動物での狂犬病のコントロールが難しく、現在でも人への狂犬病の感染があり発症するとほぼ100%の死亡率があるいわれています。しかし犬などにかまれるなどして感染してから発症までに長い潜伏期間がありますので、すでに発症した犬を狂犬病の鑑定することにより、早い段階での治療(暴露後免疫)が可能になるのです。したがって狂犬病予防法で犬が人を咬んでしまったら最寄りの保健所に咬傷事故として届ける義務があり、咬んだ犬を獣医師による診察が必要となります。このようなときでも咬んだ犬の予防接種の有無が重要になります。川崎市では、年に一回4月から7月の間に狂犬病の予防接種が義務づけられています
2013.3月 外耳炎
外耳炎は動物病院で遭遇する、最も頻度が高い疾患です。主な病因としては細菌やマラセチア(酵母菌の一種)などの感染です。耳を痒がる、頭を振る、耳が臭い、耳を触ると嫌がる、耳垢が多く出る等の症状で来院します。動物の種類やたれ耳、耳道内の被毛や耳道が狭いなどが好発の要因になります。原発のものとしてミミヒゼンダニ、細菌、マラセチア、耳道内の腫瘤(腫瘍も含む)などがあります。外耳炎は耳の病気として考えられていますが、皮膚病の一部としての外耳炎もあります。アレルギー性皮膚炎や、天疱瘡、脂漏症などに伴って起こることも多くあります。しかし耳道内の局所治療を適切に行わないと、慢性化しやすく他の疾患の治療と平行して早期に徹底的に治療するのが大切になります。上記の症状がありましたら、むやみに掃除(耳道に刺激を与えると耳垢が増える)をせずに動物病院に相談しましょう。
2013年2月 皮膚の腫瘍性疾患
皮膚の腫瘍性疾患は、しこりとして発見されるか、皮膚炎が治らないと来院されることが多いです。悪性黒色肉腫、肥満細胞腫、皮膚型リンパ腫、扁平上皮癌などの悪性腫瘍の他に角化上皮腫や組織球種、血管周皮腫、いぼ(乳頭腫)など良性腫瘍も多くみられます。これらのしこりは種類によって治療法が異なりますので、細胞診検査や病理組織検査、レントゲン検査、血液検査などを行い、悪性腫瘍であればステージ分類をして、治療方針を考えます。これには多くの情報があればあるほど正確に治療が行えます。たとえ悪性腫瘍であっても、早期に発見し治療を行えば根治することができます。体表にできたのであれば、普段からブラッシングなどのお手入れやスキンシップの際に発見することができます。注意深く観察を行い早くに病院に相談に行きましょう。
2013.1月 無菌性結節性脂肪織炎
病因が不明な免疫介在性の皮下脂肪織の疾患で、好発犬種と考えられているミニチュアダックスフンドに多く見られます。その他にコーギーやパピヨンにも見られます。難治性で生涯治療が必要なケースが多く、副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤が有効と考えられています。 皮下にできた腫瘤(しこり)で、自潰し潰瘍やろう管(深部にできた膿などが出てくる穴)が見られます。多くは痛みを伴い、発熱、食欲不振、沈うつなどの症状があります。一見すると化膿傷に見えますが、細菌感染はなく、細胞診や病理組織学的検査で無菌性結節性脂肪織炎と診断されます。副腎皮質ホルモンをはじめとする免疫抑制剤が有効ですがしばしば再発し、高容量が必要なケースも多く。難治性であり長期にわたる治療が必要となりますので、定期的な診察と血液検査などを行い副作用などの発現を注意深く観察することが大切になります。
2013.12月 天疱瘡群
特定の物質に対して過剰に免疫反応を起こしてしまうことをアレルギーといいますが、この病気は、自己免疫疾患で、重層扁平上皮の細胞間接着が自己抗体により傷害されることで皮膚や口腔粘膜などに水泡や糜爛を認める皮膚病です。皮膚ではパット(肉球)の周囲に多く見られ、糜爛がひどいと痛みも強く、歩くのを嫌がることもあります。
2013.11月 アレルギー性皮膚炎3
前回、いろいろな検査の方法の話をしましたが、特異性の高い客観的診断指針というものは存在しない為、総合的な診断と治療経過が大変重要になります。アレルゲンとの接触を避け、痒み・皮膚炎を起こさせないようにコントロールすることが大切になります。
犬、猫の多くはノミ、ダニに対するアレルギーですので、まず駆除対策をしっかり行うことが大切です。それに加えてシャンプーなどで皮膚バリアの保持に努め、これでもコントロールできない痒みに対しては、副腎皮質ホルモン剤またはシクロスポリン(免疫抑制剤)などが中心に使われます。
痒みのコントロールが主体ですのでこの薬剤の使用を極力少なくするために、他の抗アレルギー薬の併用や、皮膚バリア機能の低下させないように、まめなシャンプー、2次的に生じる感染症(ブドウ球菌やマラセチア)の治療も大変重要になります。
2013.10月 アレルギー性皮膚炎2
アレルゲン(アレルギーを起こす物質)は食事、吸入、接触(虫さされ)により体内に入ることで起こる皮膚炎です。アレルギーの症状はある一定のレベルに達すると発症すると考えられ、これを閾値と称し、複数のアレルゲン(食物、ノミ、花粉、細菌など)や性腺ホルモン、他の疾患、ストレスなどによって閾値が高められます。アレルギーの診断には、他の疾患の除外と、アレルギーを起こす原因の特定をする検査(コナヒョウダニ、ヨモギ、スギ、牛肉、米など)、アレルゲン特異的IgEを測定する方法や、アレルギー起こしやすい免疫状態を調べる検査をアレルギー強度検査(ヘルパーT細胞中のCCR4陽性細胞の割合の測定)や、食物アレルゲンによる種類の特定をする検査(食物に対する生体の寛容さのため)、リンパ球反応検査(各食物アレルゲンにより活性化されたリンパ球の割合を調べる)があります。
2013.09月 アレルギー性皮膚炎1
動物に備わっている防御反応の中に免疫系があり、何らかの障害により、ある物質に対し過剰な免疫反応がおこって、皮膚に障害を起こすものです。抗原刺激によりIgE抗体がマスト細胞に脱顆粒を起こさせヒスタミン、セロトニン、好酸球遊走因子や薬理学的活性物質(PGなどの炎症物質)などが生産され、炎症やかゆみがおこるのです。またアトピーはIgEを産生しやすい先天的素因とされ、犬では3歳までに発症したアレルギー性皮膚炎をいいます。つまりアレルギー性皮膚炎は免疫の異常によって起こるもので、完全に治癒することは難しく、上手にかゆみや皮膚炎をコントロールする事が大切です。これから秋にかけて発症することが多く。全身の痒みを特徴とし炎症や掻き壊しによる傷、漿液による湿潤や脱毛がみられます。皮膚炎は顔(目、口の周囲)耳道、耳翼、腋窩、肢端、指の間腹部などに多く見られます。
2013年8月 細菌性皮膚炎
皮膚は被毛によって外界の刺激から守られています。その構造は基底細胞から顆粒細胞へと分化して、最終的に角質細胞で構成される角層を形成します。角質細胞はセラミドを中心に、遊離脂肪酸やコレステロールを主成分とする細胞間脂質でできおり、一番外側の角質が剥がれ落ち、皮膚の厚さは一定に保たれています。そしてそのターンオーバーは22日とされています。角層は水分などの喪失を防ぎさらに毒物、微生物、紫外線から身を護るきわめて重要なバリア機能を備えているのです。しかし毛包(毛穴)の脂質栓の形成がないため、感染(特にブドウ球菌)を起こしやすいのです。感染が起こると発赤、脱毛、フケなど、時にじくじくと湿潤していることがあります。この時期皮膚表面の細菌数も増えており、汚れや雨に濡れるなどバリア機構の低下がありますと皮膚炎になりやすくなります。皮膚は清潔に保ちましょう。
2013年7月 保護犬
飼い主がいない犬は、人間社会においてその犬の居場所がないということを意味します。動物愛護センターなどの行政では、貰い手のない子犬、迷子犬、飼育を放棄された犬など多くの犬が保護されています。譲渡されない犬は殺処分が原則です。一頭でも減らす努力がなされ、殺処分率は減り返還、譲渡数は増えています。さらには動物愛護、保護犬問題に取り組む機運が高まり、今年の9月から改正動物愛護管理法が施行されます。各自治体においても引き取った犬の返還や譲渡に勤めること、犬の管理おいても有効とされるマイクロッチプの装着の義務化への検討など、改善と強化が盛り込まれています。大震災の折、保護犬の固体識別の困難より、返還はもとより、飼い主の安否すらわからず譲渡すらできない状態だったそうです。有事の際に保護犬に対する幸せのためにもマイクロチップは大変有効なものだと思います。
2013年6月 子犬の社会化とワクチン
犬の性格形成は生後3週齢から14週齢がとても重要な時期です。この社会化期の重要な時期に犬や人間との接触や、刺激のない単調な生活環境で過ごした子犬は社交性が低く、臆病で環境中の刺激に過剰に反応しやすくなる傾向にあることが分かっています。ですからいろいろな経験が必要な時期といえます。
この時期は、母親からの譲受免疫(移行抗体)が切れる時期なのです。早ければ4週齢、遅いものでも12週齢で移行抗体は無くなります。この時期に感染から守るため数回のワクチン接種によって能動免疫(自分で作る免疫)を得ようとします。この時にどうしても2週間だけ無防備な時期ができてしまいます。どの時期にこの無防備な状態が起こるかは固体によって異なるので、伝染病の感染のことを考えると、外出は注意しなければなりません。感染源(他の犬の排便排尿など)なるべく避けるようにしましょう。
2013年5月 犬のしつけ
犬のしつけとは?犬は家族の一員として扱われ、飼い主さんとの関係もとても親密になってきています。しつけや訓練で、犬をコントロールする方法は多くの本などで紹介されています。しかし犬が何を感じ、何を求めているのか、我々が感じ取ってこそコミニケーションがとれるのではないでしょうか。人は言葉である程度気持ちを伝えることができますが、犬たちの、コミニケーションはボディランゲージで表現され、服従姿勢をとったり、相手のお尻の臭いを嗅いで固体識別をしたり、本能で突き動かされていろいろな行動を示すことがあります。飼い主さんと犬とが良い関係を築くために、犬という動物を観察し理解することが大変重要だと思います。そして「しつけ」とは動物が人間社会に適応し、人間も動物も楽しく、幸せに生活していくためには必要なトレーニングだとおもいます。
2013年4月 犬猫もマダニに注意
人でマダニが媒介する新たなウイルス感染症SFTS(重症熱性血小板減少症候群)が、国内で確認され話題になっております。犬猫でもバベシア原虫、ヘパトゾーン、ヘモプラズマ(マイコプラズマ)、ライム病などを媒介することがしられています。
マダニは、公園や道路わきの潅木の茂みにひそんでいて、犬猫などの温血動物がくるのを待ち構えているのです。通りかかった動物に取り付き、数日かけて吸血し、その後落下して脱皮や産卵を行います。
季節が良くなり、散歩や外出が多くなるこの時期、マダニの寄生が気になります。しかしマダニが寄生するのを完全に防ぐことは困難です。吸血前のマダニは小さく、寄生していても気がつかないことが多くあります。背中に滴下する薬や、飲み薬を定期的(3月から11月まで月に1回)に投与して予防することをおすすめすます。
2013年3月 遊びは心の栄養
一般的に知能の高い動物ほどよく遊ぶといわれていますが、犬の心身の健康のためにも遊びは欠かせません。犬の遊びは、命の糧となる獲物を捕らえる練習と、同じ群れの仲間と仲良く暮らす技術を身につけることだと考えられています。獲物を捕らえて食べるという生死に直結するこの本能を、私たち人間が断ち切ることはできません。幼犬はエネルギーがありあまっています。作業意欲の旺盛な彼らは人間で言えば、仕事の大好きな働き者です。することがないとイライラして物を壊したり、吠えたり、攻撃的になったりすることがあります。犬の遊びの基本は獲物を探す、追いかける、捕らえる、噛むといった狩猟本能を刺激するものです。追いかけっこやボールをなげて遊ぶのも良いでしょう。ただし、飲み込んでしまう危険のあるおもちゃには注意しましょう。
2013年2月 子犬の社会化
犬の性格形成は幼いころの生活環境に大きく影響をうけますが、特に生後3週齢から14週齢の社会化期がとても重要になります。環境中のさまざまな刺激は適応能力のある犬への成長にとても必要な事なのです。仔犬はまず、親犬や兄弟犬との触れ合いを通じて犬特有のコミュニケーション技術を身につけます。さらに、人間や他の動物と触れ合うことで、絆を結ぶことができます。社会化期から仲良く過ごした動物は異なる種であっても仲間として受け入れるようになります。
仔犬にとって、心の健康のためには外出や他の犬との触れ合いが必要な一方で、最終ワクチンが済んでないこの時期は、体の健康という観点からすると外出させるにはまだ少し不安な時期でもあります。このためパピースクールなどでは同じリスクを分かち合い、細心の注意をはらって社会化のトレーニングをしているのです。
2013年1月 サークルジレンマ
クレートトレーニングの中で、飼い主さんの都合でクレートやサークルに長時間入れたままというのは、正しい使い方ではありません。子犬は豊かな環境のなかでさまざまな経験をさせて育てるべきで、そうすることで今後遭遇するであろういろいろな出来事に対して柔軟に対応することができるようになるからです。子犬をサークルやクレート入れておけば、けがをしたり、家具を壊す心配もありませんので、子犬の身体的な安全のためには良い方法でも、心の健康のためには良い方法とはいえません。長時間、自由を奪われた犬は退屈して吠えたり、サークルの中を目的もなくぐるぐる回り続けたり、自分で自分の体を傷つけるような異常な行動をおこすこともあります。さらに子犬は周囲からのさまざまなことを学習する機会を失い、刺激に対して過敏になり、興奮しやすく、臆病な犬に成長しやすいと言われています。
2012年12月 子犬のクレート・トレーニングについて
クレート(ケージなど)内で大人しくできるように慣れさせることをいいます。子犬のときからクレートに慣れさせておくと、旅行やお留守番、自動車での移動などに便利です。犬が周囲を囲まれた巣のような場所を自分の安息の場とする習性を利用したもので、慣れるまでは決してあせらず、クレートが楽しい場所、安心して眠れる場所であることを教えあげます。無理やり入れたり、閉じ込めたり、お仕置きの場所にしてはいけません。大好きなおもちゃや食べ物をクレートに入れて、子犬を呼び寄せて中でそれらを与えます。これを繰り返して、慣れてきたら時間を延ばします。咬むおもちゃなどで夢中で遊んでいる間に少しの間ドアを閉めてみます。十分慣れて、自分から入るようになったら、少しずつ中で我慢すること教えます。子犬が出たがって吠えても無視し、吠えていないときにタイミングよく外に出してあげましょう。
2012年11月 子犬のトイレ
子犬にとって決められた場所での排泄を理解するのは難しいことです。一日も早くトイレを覚えてもらうためにも、子犬を観察することが大切です。排泄物の臭いのついたペットシーツを少しもらってきて、新しいトイレにおいておくと犬の理解のたすけになります。くんくんと臭いを嗅いで部屋の隅に行ったり、くるくると回りながらお尻を突き出したり、床につける格好をしたら「待って」と声をかけ、すばやくトイレに連れて行き、やさしく排泄を促します。子犬を見ていられないときは、サークルや部屋全体にペットシーツを敷き詰めておきます。そのうち子犬が好んで排泄する場所をトイレと決め、その場所にしたときだけほめて好物をあげます。違う場所でしたときには何もいわずに片付けます。ほかの場所で排泄しなくなったら、少しずつペットシーツを敷く範囲を狭くして、最終的にはトイレの場所を覚えていくのです。
2012年10月 うるさく吠える
そえだ動物病院 29日無駄吠えは問題行動の中で最も多い相談です。犬が吠える理由を理解せずに、やみくもに黙らせようとしても、うまくいかないばかりか、逆に吠えることを助長したり攻撃性など他の問題行動に発展してしまいます。
犬の無駄吠えは、不安や生理的な要求が飼い主に吠えれば伝わると覚えてしまっている為に表れます。しかし、夜中や朝早くにワンワンと喧しく鳴かれると放っておくこともできず、ご近所の迷惑を考え要求に答えてしまう事も多くあります。まずお腹が空いている、おしっこがしたいなどある程度の生理的な要求満たし、吠えなくてもいい状況を作ってあげましょう。食事の支度を始めるとワンワン鳴くような要求吠えは無視するのが一番ですが、鳴きやんでから必ずお座りなどの号令の後に与えると良いでしょう。犬のペースではなく人間のペースに徐々に修正していくようにしましょう。
2012年9月 ワンちゃんとの信頼関係が大事
犬は群れで生活してきたため本能的に、リーダーや上位の者には絶対的な支配関係があり、一緒に暮らす犬同士や、時には人との間で上下関係を意識した行動をとることがあります。飼い主さんよりも自分が上であるという意識を持った犬は飼い主さんの命令に従わないばかりか、気に入らないことをする飼い主さんを攻撃することがあります。しかし一部では、飼い主さんとの対立場面に恐怖を感じ、自分の身を守るために攻撃してくるケースも多いと考えられています。そこでまず犬が何を考え、何を感じているかを読み取る必要があります。それに加えて犬が理解できるような方法で、飼い主さんがリーダーであることを教えていく必要があります。遊びや生活の中で、常に主導権を飼い主さんが持つことが大切です。快適な生活を過ごさせることがリーダーである飼い主の務めであり、信頼関係を築くことが最も大切です。
2012年8月 うちの子ホテルに預けて大丈夫?
近年、ワンちゃんを連れて旅行に行かれる方が増えています。しかし、法事や海外旅行などで一緒に連れて行けないことも多くあります。そんな時、初めてのホテルに預けるのは不安ではないでしょうか?それはワンちゃんにとっても同じことがいえます。言葉の通じない彼らにとって、突然見知らぬ環境で、長期間一人ぼっちにされたら、「これから私はどうなるの? 捨てられてしまったの?」と不安に思うでしょう。なかにはストレスのため胃腸障害を起こす子もいます。さらに神経質な子では、ホテルから帰ってきたら、ショックで違う子のようになってしまったという話も聞きます。少し我慢をすれば、飼い主さんが迎えに来てくれることやホテルが安心できる場所だということが分かれば、そうした事態を防げます。そのためには、徐々に慣れるように日頃から訓練してあげることが大切です。